私の最も多用するインジケーターの2番手が、このボリンジャーバンドです。
ボリンジャーバンドは「偏差値」と同じ統計学に基づいています。
ボリンジャーバンドは、統計学の標準偏差と正規分布の考え方に基づいた指標です。
標準偏差というのは、ある期間の価格が期間の平均値からどれぐらいバラツイているか、分散しているかを求めたものです。たとえば、5日間のドル/円の終値が、
1日目 80.40
2日目 79.60
3日目 77.20
4日目 78.50
5日目 79.80
だったとします。5日間の平均値は79.10になります。各終値が平均値からどれだけ離れているかを絶対値で示すと、
1日目 1.3
2日目 0.5
3日目 1.9
4日目 0.6
5日目 0.7
になります。標準偏差は、この各数値を二乗して総和を求めたうえで期間数5で割り、√を使って平方根を求めます。「1.3の二乗+0.5の二乗……」÷5を√すると、約1.28が標準偏差になります。標準偏差はσ(シグマ)と呼びますが、「平均値±標準偏差」が±1σ線、「平均値±標準偏差×2」が±2σ線になります。
この標準偏差を、統計学の「正規分布」に当てはめてみると、価格の変動が、
±1σに収まる確率 = 68.26%
±2σに収まる確率 = 95.44%
±3σに収まる確率 = 99.73%
になることが証明されています。
為替レートが+2σや+3σに達するのが、統計学的に見ると、かなり珍しいケースだということが実感できるでしょう。つまり、正規分布の考え方に立つと、「ボリンジャーバンドの±2σ線を越える確率はおよそ4%に過ぎず、いずれ平均値のほうに戻ってくるだろう」と予想することができるわけです。
こうした「逆張り」(一定方向への行き過ぎが修正されて反対方向に戻る動きに賭ける投資行動)がボリンジャーバンドの基本といえます。
「±2σ近辺での逆張り」、「バンドの拡大を狙った順張り」、の2つの手法!
ボリンジャーバンドでは、
(1)為替レートがバンドに対して、どの位置にあるか?
(2)バンドが広がっているのか狭まっているのか?
(1)に注目した場合は、まさに逆張りの発想で、「為替レートが+2σを越えたら上昇し過ぎなので売り、-2σを越えたら下落し過ぎなので買い」という判断をするのが一般的です。
反対に(2)の場合は、「バンドの幅が広がって為替のボラティリティが急上昇しているので、その方向性についていく」といった順張りの判断に使います。
ボラティリティ(変動率)は価格の値動きの激しさを示したものです。
狭い値幅で小刻みに動いていた為替レートが一定方向に勢いよく動き出した瞬間を、ボリンジャーバンドのバンドの幅で確認して、その方向性に乗るのが、(2)の順張り手法になるわけです。
このように、順張りで使うか逆張りで使うか、使い方が局面局面で180度違う点がボリンジャーバンドの難しいところです。
ただし、ボリンジャーバンドが統計学における価格の「バラツキ」を示したものであることを理解すれば、バンドの広がりや縮小、傾き具合を見ながら、
「現在の為替相場が値動きの激しい荒れた状態なのか、値動きの乏しい静かな状態なのか」
という「現状認識」をするにはたいへん役立つ指標といえます。
その現状認識をどう売買判断につなげるかが問題です。
(1)の逆張りで使う場合は、バンドの幅が拡大から収縮に向かう瞬間を狙ったり、ボリンジャーバンド同様に為替レートの「買われ過ぎ・売られ過ぎ」を判断する別のオシレーター系指標も併用したりして、売買シグナルの精度を高める必要があると思われます。
この指標を開発したジョン・ボリンジャー自身が「逆張りで使うべきではない」と言っているように、「±2σ近辺に為替レートが来たら逆張り」という単純な方法だと失敗する可能性も高くなります。
あえて単純化すると、
(1)の逆張り手法が成功しやすいのは、相場が静かな時(レンジ相場や規則正しいトレンド相場)。
失敗しやすいのは、相場急変時やもみ合い相場から上下に大きなトレンドが発生する場面です。
反対に(2)の順張り手法で成功しやすいのは、相場が静かな状態から方向性を持って大きく動き始めた時、失敗しやすいのは規則正しい相場、乱高下の続いた相場が小休止する時といえます。