一目均衡表は時間軸を未来・過去へずらした三次元チャートです。
一目均衡表は、株式評論家の細田悟一氏が一目山人というペンネームで戦前に発表したテクニカル指標です。
外国人FXトレーダーにも「東洋の神秘」として注目され、今では「ローソク足チャート」とともに日本で生まれ、世界的に有名になった定番指標として知られています。
そんな一目均衡表の考え方を一言でまとめると、「為替レートの値動きは時間による影響を受けている」というものになります。
チャートは、縦軸に為替レートの価格、横軸に時間をとった2次元的なものです。
しかし、横軸の時間は単純に前に前に進んでいくわけでなく、過去に起こった値動きの支配下にあり、現在の値動きは未来に大きな影響を与えます。
時間の流れには一種の周期性やリズムや起承転結があり、時間と為替変動の関係性を「日柄」という考え方で体系化したのが、一目均衡表なのです。
一目均衡表がほかのテクニカル指標とまったく違う部分は、為替レートやその平均値を未来や過去にずらして、「雲」や「遅行線」を描画し、売買判断に使用するところです。
二次元のチャートに過去や未来という三次元的な奥行きを持たせている点は、世界で唯一無二、オンリーワンの指標といっても過言ではないでしょう
一目均衡表の仕組みは以下の通りです。
ほかのテクニカル指標同様に一目均衡表でも、「ある一定期間の高値と安値の中間値」という”平均値的なもの”に注目します。
日足チャートであれば、
●当日を含む過去9日間の高値Hと安値Lの中間値が「転換線」=「H(9)+L(9)」÷2
●当日を含む過去26日の高値Hと安値Lの中間値が「基準線」=「H(26)+L(26)」÷2
移動平均線のように各終値すべてを足して平均値を求めるのではなく、一定期間の高値と安値の中間値ですから、為替レートの高値・安値の更新がない場合、横ばいで推移することが多いのが、その特徴といえます。
逆にいうと、転換線や基準線が上がったり下がったり傾きが変わるのは、これまでの為替レートが高値や安値をブレイクした瞬間です(むろん、過去の高値や安値が期間からハズれることによる消極的な上下動もあります)。
そのため、転換線・基準線の傾きは、為替レートの勢いを端的に表わすものとして、移動平均線の上下動よりも強い売買シグナルになります。
一目の「雲」は支持帯・抵抗帯として働き、上値下値予測に使えます。
一目均衡表の中でもっとも有名な「雲」についていうならば、この「雲」こそ、過去や現在を未来にスライドさせて、その影響を見るという一目均衡表独自の考え方に基づくものです。
日足チャートでは、
●「当日の転換線+基準線」÷2を当日を含め26日先にスライドさせたもの=「先行スパン1」
●過去52日間の高値と安値の平均値「H(52)+L(52)」÷2を当日を含め26日先にスライドさせたもの=「先行スパン2」 となり、先行スパン1と2で囲まれた部分が「雲」です。
「雲」が示しているものをあえて単純化すると、これまでの価格変動の中心ゾーンということになります。
過去の値動きの中心ゾーンである「雲」は、今後の為替レートの下落を阻止する支持帯や、上昇を阻む抵抗帯として働きます。
雲に関する売買判断としては、
●雲の上限、下限は為替レートの抵抗帯、支持帯として働く
●抵抗帯、支持帯の強さ、弱さは雲の厚みで判断する
●為替レートの雲入りは、乱高下の前兆。為替レートの雲抜けはトレンド発生のシグナル
といったものがあります。
なにより、今後の為替レートがどのように動くのかの道しるべ役として使えるのが「一目の雲」のすばらしいところでしょう。
非常に大ざっぱではありますが、雲は過去の投資家の平均的な売買価格を表わしていると考えることもできます。為替レートが雲の上にあると過去の投資家の損益がプラス転換するので上昇に弾みがつき、雲入りすると損益が曖昧になるので乱高下が起こり、雲割れするとマイナスになるので下降に勢いがつく、といったイメージでとらえると分かりやすいかもしれません。
ちなみに、なぜ26日先にずらすのかに関しては、一目均衡表の深遠な時間論が関係しています。
一目山人は、相場は安値-高値-安値-高値のN字型など、さまざまな波動で動くことが多いと考え、どのような時間軸で、波動が生まれるのかを研究しました。その過程で、「9、17、26、33、42、68、72……」といった数字が自然の流れを体現した周期であることを発見。
中でも「26」は一セットの上下動が起こりやすい「一節」と考えられ、重要視されています。
そのため、一目均衡表ではほかの指標のように、設定期間の数値を自分好みに変化させることはあまりおすすめ出来ません。
多くの投資家が9、26、52という期間設定を使っていることもあり、その数値のまま使うほうが的中率も上がりやすいように思えます。